1965年 / ハンス・ウェグナー:北欧を代表する椅子デザイナー
ウェグナーが夫人の自宅用ダイニングチェアとして手掛けました。
多数あるウェグナーの椅子の中で、夫人の1番のお気に入りです。
1965年以降、ずっと自宅で使い続けたそうです。
自宅で使うダイニングチェアを探していたウェグナーが
イメージ通りのものに出会えず、自らデザインしました。
元々は自邸用の6脚しか製作していませんでしたが、要望を受け製品化されました。
このPP701によく似たウェグナーの椅子があります。
H55(現在はCH88)
ウェグナーが『スタッキングできる椅子』を最初に試みた椅子です。
H55は1955年のヘルシンボリ国際博覧会に出展されました。
その10年後、PP701はH55をさらに洗練させたデザインになっていると思います。
知らないと、違いに気づかないかもしれませんね。
PP701は軽量化を追求し、フレームをステンレスにすることで相当軽く仕上がっています。
そして一番の特徴は背もたれと肘掛けを兼ねた笠木です。
薄く削りだした4つの無垢材を上下左右で寄せ木にしています。
そして中央部に十字型の『契り材』を使用し、つなぎ合わせています。
この『契り材』は強度を高めるためでもありますが、デザインのアクセントにもなっていて
木目が合わない箇所を ”隠せないなら美しく見せる” というウェグナーの信念がまさに表現されています。
H55の笠木もよく似ていますが、よく見るとつなぎ合わせはありません。
1枚の無垢材をスチームで曲げて成形しています。
PP701は肘掛けが長く、先端が横に幅広い楕円の形状をしていて
これを曲木加工で1枚の板から成形するのは困難なのです。
PP701はウェグナーの椅子の中で最も手のかかる構造をしています。
そのためこのPP701はH55の4倍ほどの価格になっています。
現行でつくられている木と金属の組み合わせの椅子は、この2脚だけになります。
撮影場所:武蔵野美術大学、ドロフィーズカフェ