【実用編】アリの形を描く成形合板 アントチェア

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1952年  アントチェア/ アルネ・ヤコブセン:デンマークの建築家、家具デザイナー

もともとは画家になりたいと思っていたヤコブセンですが

父の意向に従ってコペンハーゲンにあるデンマーク王立アカデミー建築大学に進学しました。

建築家でもあり、内装、家具、照明器具、カトラリーなど住居に関わる

トータルデザインを手掛けていましたが、何よりも力を入れたのは家具デザインでした。

 

この『アントチェア』と別記事の『セブンチェア』がヤコブセンの代表作なのは有名です。

アントチェアは元々デンマークの製薬会社ノボノルディスクの社員食堂用にデザインされました。

コンパクトでまとめて運べるような、スタッキングできる椅子を目指しました。

開発を協力していた、フリッツ・ハンセン社は当初あまり乗り気ではなかったようですが

ヤコブセンが売れ残った椅子は自分が全部買い取ると言い切ったこともあり、製造を始めたそうです。

そこまでの自信があったんですね。

その自信のとおり大ヒット作となり、結果的にフリッツ・ハンセン社とコラボした家具の中で

最も成功した製品になりました。

難しい合板加工や新素材を使いたいヤコブセンと、それに協力体制だったフリッツ・ハンセン社は

持ちつ持たれつのいい関係だったんでしょうね。

 

座面と背面が一体の成形合板は世界初だったようです。

今ではよく見かけますが、当時としては斬新だったんでしょうね。

座面は薄い積層合板9枚で構成されており、これらを圧縮する技術が当時はすごかったんです。

脚はスチールパイプでオリジナルは3本脚でしたが、ヤコブセンの死後4本脚になりました。

現在はどちらも選べるようです。

背もたれのくびれたデザインが蟻のような形をしていることからこの名前がつきました。

日本では『ありんこチェア』なんてかわいい呼び方もされています。

 

ヤコブセンは当時

『私の作品は必要に応えるためのもの。

最近はダイニングセットがコンパクト化され、それに合った形の椅子が求められている』

と言っています。

その結果アントチェアがうまれました。

作りたいだけではなく、世間のニーズを察知しての根拠ある自信だったように思います。

撮影場所:東京都美術館、北欧デザイン展

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